給与計算をはじめる前の準備(労働条件の明示)

労働条件(給与支払条件)の決定

労働者に支給する給与を計算するにあたって、その労働者の基本給や手当(例:通勤手当、家族手当、住宅手当など)を事前に決定しておかなければなりません。

また、給与の締日(いつからいつまでの期間を給与の対象とするか)や支給日も決めておく必要があります。

これらは労働者を雇用する際に「労働条件明示書」に記載しなければならない内容でもあり、雇い入れ日までに書面にて労働者に交付します。

労働条件明示書に記載しなければならない事項

書面の交付による明示事項

  1. 労働契約の期間
  2. 就業の場所・従事する業務の内容
  3. 始業時刻・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、2組以上の勤務班に分けて勤務(交代制勤務)をさせる場合における就業時転換に関する事項(交替期日、交替順序、交替時間など)
  4. 賃金の決定・計算・支払いの時期に関する事項
  5. 退職に関する事項(解雇の自由を含む)

口頭の明示で構わない事項

  1. 昇給に関する事項
  2. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項
  3. 臨時に支払われる賃金・賞与などに関する事項
  4. 労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項
  5. 安全衛生に関する事項
  6. 職業訓練に関する事項
  7. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  8. 表彰、制裁に関する事項
  9. 休職に関する事項

賃金については、基本となる賃金額(月給、日給、時給)、手当額(とその計算方法)、所定労働時間を超えた労働、休日労働または深夜労働に対して支払われる割増賃金率、賃金の締切日・支給日(例:毎月15日締め、当月25日支給)、賃金の支払い方法(現金支給、労働者指定の口座への振込など)を労働条件明示書に記載します。

通勤手当、住宅手当または家族手当のように一定の条件を満たしている労働者全員に対して支給される賃金は、予め就業規則や賃金規程に支給条件や計算方法を定めておいたほうがいいでしょう。

ちなみに就業規則については常時10人以上従業員を雇用している事業所は必ず作成しなければならず、さらに作成した就業規則を事業所の所在地を管轄する労働基準監督署に届け出なければなりません。

この就業規則には必ず記載しなければならない項目があり、前述の労働条件明示書の記載事項と重なる項目でもありますが

  • 始業時刻・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、2組以上の勤務班に分けて勤務(交代制勤務)をさせる場合における就業時転換に関する事項(交替期日、交替順序、交替時間など)
  • 賃金の決定・計算・支払いの時期に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の自由を含む)

については就業規則(または給与規程)に記載が必要です。

従業員数が10人未満の場合でも給与計算を行う上で、事業所の給与支給に関するルールが就業規則等によって明文化していると、支給金額の計算ミスや給与支払いに関するトラブルの未然防止につながります。

給与計算ってなに?

どうも、社労士のハセガワです。

このカテゴリーでは給与計算に関する情報を提供していきたいと思います。

さて、1回目のタイトルは「給与計算ってなに?」となっておりますが、

給与計算の文字から読み取ると、「給与を計算すること」になります。

そのまんまやん!という答えが返ってきそうですので、もう少し分解して考えていきましょう。

まず、給与とは何か?

給与と似た言葉に「給料」という言葉があります。給与=給料と思われている方もいらっしゃると思います。(←私も普段、特に意識して使い分けしておりません。。。)

給与所得という言葉が出てくる所得税法では、「給与所得」は賃金、俸給、手当など名称にとらわれず労働の対償として支払われるもの全般を指しています。

一方、「給料」とは、公務員等の間で使用されることが多いのですが、基本給を指すことが一般的です(家族手当や住宅手当などは含まないということ)。

で、さらに混乱させて申し訳ないのですが、給与と似た意味で使用されている言葉で「賃金」というワードもあります。

「賃金」については、労働基準法に

「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として 使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」

と定められています。

ここまで見ると、所得税法と労働基準法で定義の仕方は違いますが、まとめると「給与とは、労働の対償として支払われるもの(現物給付も含まれる)」と解釈するのが最もわかりやすいのではないかと思います。

私の場合は、実務上、給与と賞与を使い分ける必要があるため、

給与⇒毎月の労働に対して支払われる金銭&現物給付

賞与⇒一定期間における会社の業績および個人の業績・成果に応じて支払われる金銭&現物給付

として捉えています。

以上をまとめると、「給与を計算する」ということは

従業員(労働者)の毎月の労働(労働時間、業績、労働に付随するその他事情など)に対して会社・事業主(使用者)がその対価として支払う金銭および現物給付の金額を計算する

ということになります。

そうすると、労働の対価として支給されるものを計算するだけでいいかと言うと、実際はそうではないですよね。

給与明細を見てみると、支給される金額もあれば、控除されている金額もあります。控除されるものとして代表的なものは、所得税、住民税、社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)、雇用保険料などです。

したがって、「給与計算」とは、労働の対価として支給される金額を計算し、かつ、税金や社会保険料等の控除(源泉徴収)する金額を計算し、差し引き支給額を求めることを言います。

支給金額と控除金額を計算することが給与計算であることがわかりました。言葉では簡単そうに聞こえるのですが、支給金額の計算や控除金額の計算には様々なルールに従って計算する必要があります。

その点については次回ご説明します。